ソシオクラシーへの挑戦とコンセント
testingOsakaは、コミュニティのあり方そのものについて「実験的なコミュニティ」でありたいと考えています。その一歩として、私たちは「ソシオクラシー」という組織運営の手法に挑戦しています。 このソシオクラシーにおける意思決定の根幹をなすのが、「コンセント(Consent:同意)」です。 コンセントとは一言で言えば、「誰も異議(Objection)を持っていないときに決定が下される」という意思決定メソッドです。単なる多数決や全会一致(コンセンサス)とは根底から異なる考え方を持っています。
1. 「個人の好み」ではなく「許容範囲」で重なる
コンセントの最も重要な概念は、個人の「好み(Preference)」と「許容範囲(Range of tolerance)」を明確に区別することです。
全員の「個人的な好み」を一致させるのは困難、あるいは不可能です。
コンセントでは、「自分の個人的な第一希望ではないかもしれないが、組織の目的を達成する上で仕事をするにあたって支障はない(許容できる)」という範囲の重なりを見つけます。
これにより、 「今はこれで十分であり、安全に試せる(Good enough for now, safe enough to try)」という基準で、完璧を求めすぎずに前に進む(実行する)ことが可能になります。
2. コンセンサス(全会一致)との決定的な違い
一般的な「コンセンサス」は「全員が賛成するか」を問い、全員の好みを満たそうとするため、少数の反対で議論が停滞する「少数派の専制」に陥りがちです。
一方、「コンセント(Consent)」は 「何か異議はあるか(Do you object?)」 と問います。
多数決のように少数派の意見を無視することなく(全員の声が平等に扱われる同等性)、かつコンセンサスのように全員を納得させるために時間を浪費することなく、「相手を説得すること」から「実行すること」へとエネルギーをシフトさせます。
3. 「異議(Objection)」はブロックではなく「価値ある情報」
コンセントにおける「異議」とは、「なんとなく不安だから」「個人的に好きではないから」という単なる懸念や好みの問題ではありません。
異議として成立するのは、 「この提案を実行すると、組織の目的達成が阻害される(効果が下がる、好ましくない結果やリスクをもたらす)」という理由に基づいた主張(Sound Arguments)のみです。
ソシオクラシーでは、異議を厄介なものではなく、「提案をさらに良くするための価値ある情報(贈り物)」として歓迎され、「合理的な議論」に最高権力をシフトさせています。
異議が提出された場合は、提案をただ却下したり多数決で押し切ったりするのではなく、理解・探索・統合 のプロセスを通じて、その懸念を解消しつつ元の提案をより良いものへと進化させます。
このプロセスはソフトウェアテストにも通じる美しいものがあります。
4. コンセントの対象と範囲
組織のあらゆることをコンセントで決めるわけではありません。
コンセントは主に以下の 「方針決定」に用いられます。
- 方針(ポリシー)の決定や改定
- 役割(ロール)を担う人の選出
- 会議のアジェンダ(議題)や議事録の承認
日々の活動については、コンセントで合意された方針や役割の枠組みの中で、担当者が自律的に素早く意思決定を行います。
5. コンセントの契約(メンバーの責任)
コンセントの原則をコミュニティに導入することは、メンバー一人ひとりに当事者意識と説明責任を求めます。「コンセントの契約」として、以下の2つが暗黙のうちに求められます。
- 提案や決定に対して異議がない場合は、合意したことを最善を尽くして実行する責任を持つ。
- 提案や決定、活動に対して、組織に害を及ぼす可能性に気づいた場合は、それを提起する責任を持つ。(沈黙して後から文句を言うことは推奨されません)
まとめ
コンセントとは、「全員の声が無視されないこと」と「目的達成に向けて効率的に進むこと」の対立を乗り越え、両立させるためのシステムです。
個人の好みを押し付け合う不毛な権力闘争を手放し、全員で「testingOsakaの目的」という共通の目線に立って、安全かつ俊敏に実験を繰り返していくための基盤となります。
testingOsakaでは、この考え方をベースに、コミュニティ運営に挑戦していきます。
参考文献
Rau, T., & Koch-Gonzalez, J. (2023). Many Voices One Song: Shared Power with Sociocracy (Kindle ed.). Sociocracy For All.